AIに絶対負けない営業スキル その2 『タコス屋のババアに学ぶ真の提案力』

こんにちは。今日も今日とてノルマに追われながらも、そんなことを気にも留めずADバンのシートをがっつり倒してパチンコ屋の駐車場でモンストやってる営業マンの皆さん。お元気ですか。まあ元気ですよね。病気なら病院に行ってますしね。元気ではあるけどやる気が出ない。そんな無能で怠惰なリビングデッドな皆さんに、今日も営業スキルの上がる素敵なお話をしてあげましょう。

あれはもう15年ほど前ですかね。就職したばかりで縁もゆかりもない名古屋に転勤になった俺は、休日に名古屋駅周辺で飯でも食おうと、名古屋駅の飲食店街に立ち寄ったのです。そこでこじゃれたタコス屋があったので入り、めちゃくちゃ数あるメニューからおいしそうなものを選ぶと、おばさんというかおばあちゃんという年齢の店員さんを呼んで注文をしました。そう、何を隠そう。このおばあちゃんというかクソババアの店員こそ、驚くべき営業スキルを持つハイパーババアだったのです。

『それ、まずいから止めときな！！』

その直球すぎるストレートボールにビビりました。常連でもない初見の客が注文したメニューを全力で否定。その理由も『まずいから』という飲食店における最強のネガティブワード。かつ店に響き渡るラウドボイス。どうやら厨房や他の店員も慣れたものなのか、店がざわつく様子もありません。あまりのショックで頼んだメニューもその味も覚えていませんが、その衝撃のババアの提案スタイルに心を奪われ、また次の週も思わずそのタコス屋に入ってしまったのです。あれは今思い返すと恋をしていたのかもしれません。

2回目も、また注文を拒否されるのだろうか…？と期待と不安が入り混じりつつも前回頼んだものと違うメニューを注文すると、今度はすんなり通りました。少しだけがっかりしましたが、ババアのレビューボードを通過したということは結構な美味タコスなのでは…とドキドキしながら待つこと数分。手渡されたタコスにがぶりとかじりつくと、俺が頼んだものと全然違う味がします。あれ？間違えてる？これ俺が頼んだものと違いますよ？と弱気ながらも伝えると、

『え？違う？でもこっちのほうが美味しいから！！！』

こっ…！このばばあ…！今度は事前ではなく事後に無断でおすすめメニューを提案してくるとはッ…！ここまでくると注文という概念がこの店にとって意味があるのか不安になるレベルです。食べたいものを注文しても拒否されるか、違うものが出てくるかの二択。俺はますますババアのクリエイティブな提案型タコスに心奪われ、気づけば毎週日曜に必ずババアのタコス屋に通うほどになっていました。もう三回目くらいからはメニューすらロクにみず、たまにオーダー通り正しいものが出てくると『今日はラッキーデー』などとババアに感謝の念すら抱いていました。

貴様等！！このババアみたいになれ！！！！！

タコス屋のババアそのものになれ！！男性器をひきちぎって老いろ！！！

っていうことが今日は言いたいんですよ。つまり、客の要望を聞いてそれをかなえることと自体が必ずしも良いことじゃないんですよ。お客様第一！なんつっても神様じゃないんだから、その要望自体が間違ってたり、背景をよく聞くともっとよい選択肢が隠されていたりするもの。客自身が自分の要望を理解していない、なんてこともよくある話ですし、本当に客のことを思えばこそ、客の要望を否定しなければいけないときだってあるんです。

また価格交渉や何かしらの依頼が客から会った時でも別に家来や奴隷じゃあるまいし、変に卑屈に下手なる必要なんてないんですよね。むしろ、今のこのご時世よっぽどのバカじゃなけりゃ媚びてくる人が好き、なんて奴はいませんし、そんな見え透いたおべっかに騙される人間がのし上がる会社なんて自浄作用が働かないダメ会社だっていっているようなものです。こちらが言い方や礼儀作法がきちんとしてさえいれば、本当に客のことを考えた提案は、一時的に否定されたとしても、絶対にその後の関係性はよくなるはずなんです。

ということを俺はあのタコス屋のババアから学んだような気がします。ちなみにそのタコス屋は俺は名古屋にいた4年間ほぼ毎週通い続け、それなりに固定客もいたので結構繁盛していたようでした。やっぱりあのババアの斬新な営業スタイルが功を奏したのでしょう。あれから10数年、久々に名古屋に出張があったので先週行ってみたんですよね。

潰れてました。

マジか。

まあ、ねえ。

よく考えたら注文ロクに通んなかったもんなあ。