そのラリアットはマジでヤバい

おっさんIT系サラリーマンの自意識が高ぶったときに、ふとぶちかます雑記です。

君は監禁されたことがあるか

こんにちわ。今でこそ不惑と言われる40歳になり、安達祐実の変わらぬ外見以外には一ミリも動じない俺ですが、それこそ15年ほど前の入社2-3年目の若造のころは迷って惑っていろんな人に迷惑をかけたものです。その時には安達祐実のすごさには全く気付いていませんでしたが、さらに10年以上前から安達祐実はデビューしてたと考えるとすごくない…?マジすげすぎない…?由美かおるもすごかったけど安達祐実はレベルが違くない...?

 

同情するなら金をくれ!!できればリリース前の仮想通貨で!!

もしくは油田!!

 

っていう心の底からの本音は置いておいて。今日お伝えしたいのはですね、その15年ほど前に起きた俺の社会人人生の中でもベスト5に入るほどビビった事件のことです。その頃俺はある地方都市で工場向けのソフトを売る営業マンをしていたんですよ。業務用のソフトってまあ高くて、それこそ何千万もするもので。それを25ほどの若造が強面の百戦錬磨のおっちゃんたちに売り歩くわけですから、そりゃ一筋縄じゃ行かないわけで。でも無駄な行動力と特攻精神はあったので、あるA社の工場長さんにはそこそこ気に入られていたんですよね。

 

そのA社の工場長さんは今考えると40代後半で若いにもかかわらずまあパワフルで、俺が売るソフトについても強引な要望をねじ込んでくる人でした。それでも買ってくれそうだったので諦めずに通っていたわけです。そしたらある日、珍しいことにその工場長さんから電話が。『悪いけど、いますぐ来てくれんか』と。その時すでに夕方の5時を過ぎていましたが、2000年代当時は今ほど残業もうるさく言われなかったし、客先による行くこともさほど珍しいことではありませんでした。着くといつもより豪華な会議室に通され、横に部長級のおじさんたちがまた2名ほど俺を取り囲むように座りました。そして一言。

 

工場長『明日、ソフトを収めるまでお前を返すわけにはいかないんだよ』

 

ん?え?これなんていうドラマ?それも広島系ヤクザもの?詳しく言えば広島系ヤクザ監禁脅迫もの?動揺する俺を尻目にふかぶかとソファーに座り込む工場長と部長たち。で?いつ納品できんの?2時間後?とか有無を言わさずぶち込んでくるわけです。あのですね。文房具とかならまだしも、そこそこ値段のする業務用ソフトってまず書類作って客先で稟議を通してその書類を押印してもらったものを持ち帰り、受注処理をしてソフトを納品するわけです。細かいこと言うとハードウェアもそれなりのスペックを求められるから手配しなきゃいけないし、操作だって難しいから教育も3-5日ほどかかりますし、その後慣れるのにも時間はかかります。どんなに短く見積もっても納品に1週間、使えるのになるように2週間はかかるわけです。

 

工場長『そんなことは聞いてない』

 

俺『いや、ですから、教育も必要ですし、人員が埋まっていまして』

 

工場長『夜から教育しろ』

 

俺『いや、夜はちょっと…納品も注文書貰ってから一週間は』

 

工場長『今すぐ上を呼べ』

 

言語道断で携帯で上長を呼び出せと迫ってきました。マジヤバ。話になりません。横の部長2名は仁王像みたいに怖い顔して一言も発しないし、目の前にインドの怒りの神みたいな工場長がいるしで、もう震える手で上司を呼び出さざるを得ないわけですよ。ちなみにこの時点で夜10時回ってたと思います。携帯で夜中に呼び出された上司もわけもわからないうちに電話で工場長と話す羽目となり、その後数秒で

 

工場長『話ならんからもっと上を出せ』

 

おいおいおい!!!見切り早いなおい!と部長の上の事業部長まで電話で呼びつけようとするわけですよ。ハンパない。さすがにその時の俺は安達祐実が目の前にいてもそれどころじゃなかった。目の前で電話越しに上司が責められ、さらにその上司が呼び出されている今。まだハラスメントという言葉すらなかった時代でしたが、この状況が世界上のビジネス界におけるあらゆるルールに違反しており、どっちかというと広島ヤクザ系のルールなことは理解しておりました。そしてどれくらいたったことでしょう。上司の上司と工場長が話をした結果、夜の11時を過ぎて俺は解放されることになりました。

 

なるほど!こういう気持ちか!強盗に捕まってた銀行員がリリースされた時は!変な心臓の高鳴りとともにぐちゃぐちゃの脳みそのままで上司とその上司に電話を入れたところ、どうやら工場長は『とにかく注文署がないと、ソフトの手配はできない』という『お金を払わないと物は買えない』というビックリマンをパクる小学生以外全国民が知っている真実をようやく理解し引き下がってくれたとのこと。感謝を上司に伝えつつ、半泣きでその日は帰りました。

 

次の日、朝イチで工場長からFAXが来ていました。

きったない字で手書きの注文署が。

 

これ絶対、ヤマダ電機チラシの裏とかにマジックペンで書いたろ?っていうような小汚い、よく言えば岡本太郎も絶賛のアーティスティックな字で、ソフトウェア名と価格が殴り書いてありました。どうやら昨日の監禁脅迫はナイトメアでなく事実だったのだな、という驚きと、まだ若い俺でもさすがにわかる。手書きの注文署という工場長のアナーキーさ。主婦の買い物メモでももうちょっときれいだぞ!と憤慨しつつも、社内の法務に確認すると一応効力はあるようで、何を言われるかわからないので速攻で処理を回そうとしていると、そのA社の総務の方から電話が入りました。

 

A社総務『すみません!!その注文書!無効です!』

 

やっぱ?どうやら工場長が独断でやっちまった模様です。もうね。なんなんだ。コントかよと。だとしたら息ピッタシだなと。間が完璧だなと。感心しましたよ本当に。そんでA社の中もなにか揉めに揉めたようで、その半月後くらいに正式な発注が来ましたが、後にも先にも手書きの注文書が来たのはその時しかありませんでした。あれから早くも15年ほどたち、俺も担当が変わりましたが、今その会社のHPを見ると、

 

あの工場長、めちゃくちゃ出世してました。

 

 

やっべえ。やっべえな。

 

やっぱさ、世の中ってあれよね。その。うまくいえないけどさ。

 

パワーなんだな。って思いますね。パワー。

 

 

 

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