そのラリアットはマジでヤバい

おっさんIT系サラリーマンの自意識が高ぶったときに、ふとぶちかます雑記です。

UTMF KAI69を走ったぞ

こんにちわ。先週、日本最高峰のトレイルランニングレース、UTMF(ウルトラトレイルマウントフジ)と思わせてそのショートバージョンであるUTMF  KAI69を走ってきましたよ。去年トレランを初めてその存在を初めて聞いた際に、165キロ(100マイル)、累積7000メートル超というウルトラスーパー超絶ゲロきつレースが存在することに驚きましたが、それに毎年2000名以上が高い抽選倍率をくぐり抜けて4万払って参加するという、日本における山岳マゾの多さとその熱狂ぶりに度肝を抜かれました。マウンテンアドレナリンに脳をやられる山岳薬物中毒者の増加が問題視されるのも時間の問題です。

 

それもそれも、UTMFは誰しもが参加できる者ではなくITRAポイントというものを貯めねばならず、それも直近3レースで10ポイントを集めねばならぬのです。ちなみに70キロレースを走っても3しかつかないので、最低1レースは4ポイント以上、つまり100キロ超のレースに完走せねば参加すらできません。おかしい。昨年、夜間の山中を豪雨に塗れて低体温症ギリで完歩した地獄のハセツネですらたった3ポイント。一体どうなってんだ山岳マゾどもの頭の中は。累積標高に頭と太ももやられておかしくなってんじゃねえのか。

 

しかしUTMF、出たい!せっかくハセツネで3ポイントゲットしたんだし!と思っていたらUTMFのショートバージョンであるKAI69というものが22年に新設され、それはITRAポイントが3あれば参加できるとのこと。ちなみに距離は69キロ、累積標高は約3000M。ハセツネより低い!よっしゃUTMFのカンを掴むためにもこりゃ応募するしかねえ!とハセツネで太ももと頭がやられた山岳マゾの私は申し込んでしまったのです。そして当たった。まじか。

 

それが昨年22年末くらいでしたっけね。正直、あのハセツネがあまりにキツくてキツくてあれをもう一度走るのは相当な困難を伴うぞ…とビビり尽くしていたので、昨年末からKAI69がある4月までの約4ヶ月間、俺は自らを鍛え直さねば完走はできないだろうなと思っておりました。なので年明けから毎週以下のノルマを自分に課しました。

 

・月合計200キロ走キープ

ダンベル20キロを持ってランジスクワット50回を毎週2回

・週に一回坂道ダッシュ10本

・毎週末に30キロ走

 

これまでも月に200キロは走り込んでいたのですが、山岳レースのきつさは平地のそれとは段違いです。なのでフルマラソンを完走する筋力とはまた違う、長距離の山向けの走りに必要な粘りを作るには上記が必須だと考えました。そして実行したのですが最初はまじできつかった。なんせ30キロ走のダメージって1週間じゃ抜けないですからね。でも毎週やることで確実にスタミナはついたと思います。そしてフルマラソンでいうところの30キロ走に当たる、累積標高がそれなりに伴う長距離走として42キロ、累積標高3000メートルの高尾マンモスを年末と3月に一回ずつこなしたり、ハセツネ30キロコースを辿ってみたりして、実際のレースにおける長時間山にいるという感覚を養ったりもしました。ちなみに高尾マンモスはしんどすぎて2回失敗しました。あれ考えたやつも相当の山マゾです。

 

そしてあれよあれよというまにレース当日。今まで見たことない膨大なトレイルランナーという山岳マゾヒストの多さとその賑わいに慄きました。こりゃフェスじゃ!俺の嫌いな陽のものが集まるフェスな感じやんけ!陰のものである俺はその雰囲気にのまれ開始までに7回はトイレに行きましたが、それでも膀胱とメンタルが完全に萎縮しておりました。てか単純に寒かった。そして8回目の排尿に行こうかな・・・と悩んでいたら号砲がなりいよいよスタートです。やばい!トイレ行きたい!と思いつながら緩やかに走っていると気づいたのですが応援の数が多い。トレイルのレースって山の中がメインのこともあり、応援ってそこまで多くないんですけどさすが日本最大最高峰のトレランレース。めちゃくちゃ応援が多い。賑やかですごい。途中パンダの被り物した人がリコーダーでWe Will Rock YOU吹いてたり、後半だと夜中のど山中でも誘導してくれる人たちがいたりで、もうほんと運営とボランティアの人たちには感謝しかない。

 

そして何がありがたいってあれよ。エイドよ。約15−20キロおきにエイドという休憩所があるんですけど、これが豚汁やらおにぎりやらうどんやらチョコレートやら無償で提供してくれるもんだから、(参加費払ってるけど)それがうまくてうまくて食うと力がみなぎってほんと胃腸と腎臓を無料で差し上げたいくらいありがたかったです。なんせ富士山の麓だから標高高くて夜中ほんと寒いんだけど、豚汁飲んだだけでめちゃくちゃ元気になるんですよね。あったかい食事まじ大事。

 

てなもんで、後半の夜間フェーズにはいって杓子山とか霜山とかもきついっちゃきつかったんですが、我ながらびっくりしたんですが、ハセツネの時あんだけ「やべえもうダメだ…」と4億回くらい思ってたのに今回は1回も思いませんでした。なんなら上り以外は最後までほぼ走れました。それはさっき書いたトレーニングが功を奏した、と言いたいところですが、何よりハセツネの時になかったエイドの存在と、あと昼間がメインでしかも好天だったことが大きいです。ハセツネの時はガチ豪雨で体が冷え切ってましたからね。今思うとエイドなしで豪雨で闇の山中がほとんどのレースってなんだよ。自殺行為じゃねえかよ。

 

あとね。何より大きいのが、UTMF165キロコース、FUJIの人たちが横を並走しているわけなんですけど、この人たちの存在が一番大きかったかも知れません。だって、だってだよ。俺がいくらキツイいったって、横に俺より少なくとも100キロ多く走る人がいるんですよ。それもね、みんなアスリートみたいな人かな、って思うとそうじゃないんですよ。普通のおっちゃんおばさん、なんなら小太り遊ばされている人とかいるんですよ。その人たちがね、愚直にヘロヘロになりながらも走っているのを見るとね、俺のキツさなんてチンカス未満だなってまじで思うんですよ。そしてその人たちがまじで美しくカッコよくリスペクトせざるを得ない神々しさに溢れているように見えるんですよね。

 

我々KAI69の人たちの方がそりゃ走ってる距離が少ないから元気なわけで。当然FUJI165キロの人たちを追い抜くことも多いんですけど、「頑張れ〜!」とか言えないんですよ。だってめちゃくちゃ死ぬほど頑張ってるのわかりますからね、これ以上頑張れって言えないよ。でもめちゃくちゃカッコよくて美しくて、何か声をかけたいんですけどなんていっていいかわからなくて、最後まで「お疲れ様です…」としか言えませんでした。逆に「ナイスラン!」とか励まされたりしてね。いやいやお前の方が100キロ以上ナイスランだよ。そんな声かけなくていいよ。休みなよ。いやまじでありがとうだよ。

 

というわけでね。なんだかんだ15時間くらいかけて完走しましたけども。そりゃUTMFの勘をつかむって意味ではとても良かったんですが、何より165キロ走る人たち、100マイラーの美しさと素晴らしさを目前であんだけ見たもんですから、自分が走り切ったこともよりも周りに圧倒されちゃいましてね。走り終わっても自分のことでは感動しませんでした。それより100マイラーの方々をずっと応援しちゃいますよね。そしてボランテイアの方々もすごいのよ。私の友人のトライアスリートもボランティア参加してましたけど、あのクソ寒い中、体をろくに動かさず仮眠もろくに取らずに1昼夜誘導してましたからね。なんなら走ってる方が楽だとすら思いますよ。

 

いやー、ほんと自分の力を出し切って感動したかったんですが、まさかそれ以上に頑張る人たちがあまりに多いがためにそっちに感動しっぱなしでした。そして私も来年こそはポイント貯めて100マイラーになりてえなあ!という思いがより強くなりましたよ。みんな山岳マゾになって脳内麻薬だしまくろう!

 

 

この薬物中毒なら逮捕されないぜ!!