そのラリアットはマジでヤバい

おっさんIT系サラリーマンの自意識が高ぶったときに、ふとぶちかます雑記です。

ハセツネ2022を走ったよ

ご無沙汰です。いきなりですが走ってきました。日本山岳耐久レースことハセツネ。トレイルランニングする人にとってはいつかは出たい!と思わせる2000人規模の参加者が集う日本有数の大規模トレランレース。また71.5キロ、累積標高4500m、午後13時スタートなので走る大半が真夜中の山中という過酷さなのに補給が42キロ地点の水1.5リットルしかないというマゾヒスト向けなシビアさ。俺も初めてこのレースの存在を知った時には思いましたよ。

 

「どんな頭おかしい奴らが出てるんだ?」ってね。

 

 

 

でも完走した今ならこう思います。

 

 

 

「マジでみんな頭イカれてるぜ!!!」って。

 

 

あ、タイムは20時間とかだからガチのマジな人は参考にしないでくださいね。

 

 

■ハセツネなんで走ったか

なんでそんなクレイジーなものに出ようと思ったかというと、フルマラソンを今年の一月にサブ4したんですよね。で、おそらく3時間以内は無理だなって思ったんです。ランニングは大好きな趣味ですが8年くらい市街地ばっかり走ってると飽きてきて、目標を見失ってたというか。で、トレランの真似事して見ようって思い、ふと高尾山の方とか自分で走って見たんです。するとこれがすこぶる気持ちいい!緑の中、尾根を駆け降りる爽快感がたまらない!おっさんはキャンプとか釣りとかアウトドアに流れる人多いじゃないですか。それって自然の中でリフレッシュできるからなんですけど、初めてその気持ち良さってのがわかりましてね。そりゃ山を登るときは苦しくて、昔から登山なんてキツいし苦しいし何が楽しいんだ、と思ってたんですが42のおっさんにもなると悪い意味で刺激をあらゆることに感じなくなってきて、もう登りの苦しいキツいことが山を駆け降りる気持ちよさまでのスパイスというか、サウナと水風呂というか、苦しさすらより楽しさ嬉しさを際立たせる必須条件みたいなもんに思えてきたんですよね。

 

■トレラン開始〜本番まで

で、今年4月ごろ、友達が青梅高水国際っていう16キロくらいのトレランレースに誘ってくれたから出たらこれがまあ、ちょうどいいキツさで走って気持ちいい。ロードと違って飽きないし、登りは歩いていいからある意味キツくない!こりゃいいってんで調子ぶっこいて両神山トレイル20キロ、プレ陣場山34キロって出てみたらおお、意外にいける。こりゃ71キロのハセツネもいけるか!?と思い、開始3分くらいで満員になると噂の申込開始日にIpadスマホ、パソコン3台で望んだら通っちゃったんですよね。よっしゃー!!と思ったんですけど本番2ヶ月前の8月くらいからめっちゃ怖くなってきて、ナイトラン講習とか、自分で試走とかしてみたら、めっっっちゃキツくて焦りました。だって水3リットル持ってるのに、前半で飲みきってしまう。補給のある42キロ地点なんて到底追いつかない…初めて水がない恐怖を知りました。いろんな人の体験談見ると、大体みんな暑さと脱水で苦しんでいるとのことで、試走した時点で正直こりゃ無理だな、参加費2万もったいないことしたなーと思いましたね。マジで。

 

■ハセツネ本番

そして本番。緊張して前日全然寝られず、やべえなと思いながらスタート地点へ。初めてみる本気のトレイルランナーたちの気迫に押され、テーピングを3重にしたガチガチの足首と同じくらいガチガチでございました。事前にYouTubeとかで予習したようにスタートは飛ばさず、最後尾あたりからゆったりと始め、汗のかきすぎに気をつけ、水はどうしようもない時に一口飲むか飲まないか。これで25キロくらいまでは遅いながらもね、さほど疲れず行けたんですよね。闇夜の中とはいえね。

 

だが!!ですが!!しかし!!!事前の予報通りとはいえ、降り出した雨がすごかった。これは今年の参加者は皆苦しんだんじゃないでしょうか。風雨、正確にいうとその風雨による寒さと、何よりも足元の悪さに。足元がもうトレイルランニングとかそういうレベルじゃない。足首まで泥で埋まり、引き抜くときにガポッと音がするレベル。靴が重くてしょうがない。初めはそれでもなんとか耐えてましたが、前半の佳境、三頭山に至るともうちょっとした川。泥のぬかるみのせいで一足前に出すと三歩滑ってしまい登れない!そして俺はストック持ってない!!!何度も転けながら滑りながら時に這いつくばり、時に木を掴んでよじ登り、落ちてる太めの枝を支えに歯を食いしばって登りました。そして登り切ってようやく下り基調と思ったらまた泥で滑る!転びすぎて滑りすぎて、もうケツで滑った方がいいんじゃね?と開き直ってマジでケツで滑って降りたところもありました。あのケツにぐちゃぐちゃの泥が入る感覚、小学生以来でした。懐かしさすら感じる。当時はうんこだったけど。

 

そしてようやく水の補給地点42キロまでヒイヒイになってきたら、もうスタートから10時間以上経っており、もうオールナイトニッポンとかやってる時間帯。そして標高1000メートル近い地点。全然暑くないから水には相当余裕があったわけですが、水を入れ替えて少し休むか〜、と思ったらめちゃくちゃ寒い。今まではがむしゃらに動いてたから体に熱があったんですが、5分も止まるともう体が冷えてきて、本能で「こりゃやべえ」と思い速攻で歩き始めました。終わった後で見ると、4割近いリタイアの方々は大体低体温症みたいでしたね。いやそりゃそうだろと。周りから嫌って言うほど脱水に気をつけろ!暑いぞハセツネは!と言われたらクソ寒いなんて、一体どうすりゃいいのよって思いますよね。事前にちゃんと言ってよ!(神へ)

 

そしてその後はもう、泥水の中を「寒いキツい辞めたい」と思いつつ、「でも2万払ったし、周りにハセツネ出るぞ!って言っちゃったし」と思いながら、残り距離のことを考えるとやめたくなるから考えず、目の前の一歩だけを考えて、ひたすら耐えて耐えて耐えて、滑って転んで、大岳山を終えた後にはもう抜け殻みたいになっていました。最後の金毘羅尾根もちょっとだけ走れましたが、ゴールまであんまり記憶がないです。ただただ、生きて帰りたいと思っていました。エネ餅を齧りながらただ足を前に出す機能しかない、生き物として最もシンプルな形。人や猿どころか、ボウフラとかミミズとかに近いです。

 

■ゴールしてみて

で、残り5キロ!とかみんないうんですけどクソ長い道中をようやくゴールした時は、よっしゃー!って感じでもなくて、嬉し涙が出るわけでもなく。手を上げたかどうかもマジで覚えてないです。そりゃあ、初め走ってる時は「ゴールした時は世界が輝いて見えるかも!」とか「感激で泣いちゃうかも!」「人生観変わるかも!」とか思ってたんですが、マジでもう、何も考えられなくて、走らなくていい安堵感と、ただただ雨の山道には2度と入りたくない、という言葉にもならない2つの感情の塊だけでした。苦しさやきつさの裏にある喜びを感じたくて出たのに、裏の喜びすら感じられないくらいキツかったです。ある意味忘我の境地。まさに字の如く日本山岳「耐久」レース。舐めてたわけじゃないですが、フルマラソンサブ4くらいで調子乗って申し込んで、ほんとすいませんでしたって感じです。

 

でもアドレナリンはおそらく出っ放しだったんでしょうね。前日寝不足だったのに全然眠くなかったです。そして次の日もガッツリ寝るでもなく、普通に起きました。あの1日分の睡眠はどこ言ったんだろう。そして今、マジで思いますね。

 

「今度は灼熱のハセツネに出たい!ストック持って!」

 

 

 

*出たい人用、持っていってマジでよかったもの

 

・ミレーの網シャツ 

おい!エキセントリックなど変態シャツじゃねえか!と思われる見た目ですが、安心してください。Tシャツの下に着るものです。汗冷えがなくなるのでマジですごい。とは言いつつも序盤は暑かったので雨が降ってきてから着ました。どうやったって?脱ぐしかねえだろが!そう、夜の山中で普通に上半身全裸になって着たよ。だって死にたくないからな!

 

・ある程度値段が高いレインウェア

ワークマンとかが悪いってんじゃないですが、寒い夜の山を一晩中風雨にさらされるわけですから、それが原因でリタイアとか病気になったら洒落にならないのでちゃんとしたやつ使った方がいいです。俺はパタゴニアのストームレーサーってのにしました。これと上のミレーの網着込めば、動いてる限りは全く寒くありませんでした。お腹も冷えない。(膀胱は冷える)

 

・ガム

これは会社で完走経験がある先輩から、「水が飲みたくなるからガムを噛むと節水になる」と言われ、ほんまかいなと思いましたがほんまでした。このおかげで1リットルくらい節約できてたと思います。噛み心地や味から言って、「歯磨きガム」が最高でした。だって初めからあんま味ないし。今思うと眠くならなかったのもこのお陰かもしれない。

 

・足に貼るテープ

あれみんな、オシャレだから着けてんの?と思ってましたが全然違った。ごめん。意味あったんだね。私は足首用のやつを3枚重ねで貼りましたが、おかげで何度転んでも捻っても何のダメージもありませんでした。必須。膝のやつも貼りましたがそれは正直わかんなかった。貼り方が悪かったのかな。

 

・大きなゴミ袋

着替えた後の泥ぐちゃな靴とか着替えとかリュックとかを詰め込むのに必須。3枚くらい持っていきたい。終わってからシャワーとか風呂がないので、くそどうでもいいシャツとかパンツをお風呂までの繋ぎにあるといいと思いました。(俺はなかったのでお気に入りのシャツが臭くなった)

 

・腰に付けるライト

俺はレッドレンザーのこれを二つ持って行って、一つは頭にもう一つは腰に付けて、どちらかが電池切れたらもう一つ使おうと決めていました。そしたら地面がよく見える腰しか使わず。時間も明るさも充分でした。路面しか見ないから腰だけで良いっていうか、霧もすごいからヘッドライトあんまり意味なかった。

 

・根性

なくてもいい。ただただ目の前の一歩を進めることだけ考える。根性!とか気合い!とか思うと、残り距離と現状の過酷さに負けるので、ただただ一歩のことだけを考える。周りの人とかどうでもいい。自分の一歩のことだけ考える。

 

・ジェルとか食い物

40個くらい持っていきましたが使ったのは30個くらい?カフェイン入りのやつとそうでないの、脱水対策用、いざという時のやつとか4種類くらいありましたが、ぶっちゃけどれもあまり違いませんでした。なんだかんだ言って羊羹とエネ餅最強。エネ餅めちゃくちゃ元気でる。1時間に一個で凌げるかと思いましたがキツい時は30分に一個食ってました。よく「胃腸が弱って食べられなくなる」とか言いますがそれはなかったです。丈夫な胃腸に産んでくれたお母さん、ありがとう。

 

 

だが寒さのせいか、おしっこは常にしたかった。

 

できれば来世では膀胱の耐久力を高めによろしく。(神へ)