仕事におけるストレスは己を成長させる糧

今年、数えで40歳になるんですよ。もうこの年齢にもなると日常でも大きな責任ある仕事を任されることが多くて、日々シビアな判断の連続なんですよね。当然大きなストレスも感じるわけですがそれも仕事の醍醐味じゃないですか。より自分を成長させる栄養だと前向きにとらえてる部分がありますね。まあ、日々封筒を折って折って折って折ってノリをつけてノリをつけてノリをつけてノリをつけて十数銭を稼ぐ極悪受刑者の皆さんには俺の仕事におけるストレスってちょっとイメージしづらい部分があると思うんで、例として以前あったことをお知らせしましょう。

その日は誰もが知る大企業の役員の方々を招いての打合せ。当然ここに至るまでにはいろいろな準備とネゴシエーションがありました。数多くの弊社製品をご覧いただくために大きな会議室を貸し切り、優秀な社内メンバーと事前打ち合わせを何度も重ね、用意周到なアジェンダを組む。お客様がそれなりの肩書なので弊社側社長含めた経営層の挨拶も段取っています。何度も頭の中でシミュレーションを重ね、もうこれで大丈夫だと安心しての当日。来客1時間ほど前に会議室で準備を進めているときにそれは起きました。

『このサーバーのコーヒー、まずくない？これ止めてコンビニでコーヒー買ってこい』

それは経営層に近しい立場のベテラン社員Aから発せられました。今日の来客は10数人ですが座りっぱなしというよりも製品を見ながらなので立っている状況が多く、合間の休憩時間用にコーヒーサーバーを準備させていたのですが、どうやらそれがお気に召さない模様。俺はといえば座右の銘が『肉は肉』で、松坂牛A5ランクと道端で死んでるカエル肉との味の違いが全く分からないほどの味音痴なので、コーヒーなんてどうでもいい、ごはんですよ！をお湯で溶かしておけばよいのに、と思っていたのですが、彼にとっては譲れないポイントだったようです。

もう来客まであまり時間もありません。自分自身にこだわりがあるならまだしもまったくないので、事を荒立てるよりも素直に動こう！と、下のコンビニに極上のごはんですよ！を見つけにダッシュしようとクラウチング姿勢でいると、また違う先輩社員Bから声をかけられました。なぜ重要な来客直前なのにクラウチングスタートしてるのか？と聞かれたのでAさんから言われたことを伝えると、

『そんなん止めろ止めろ！コンビニコーヒーなんて誰が喜ぶんだよ』

と、Aに聞こえない位置で俺に言うのです。いやいやいや。俺に言うなよ！俺あれよ？コーヒーと泥水の違いあんまわかってない人間よ？そんな人間にコーヒーの是非を解かれても困るわ！ゴリラに微分教えて意味あると思う？腕ひしぎ逆十字固めとか教えればいいのに！微分は不要だろ！そう！俺に！コーヒーの是非を問うな！そして何よりもAに直でいえや！！口があって目が見えるならそこにいるAに直で言えや！！と思ったんですが、もう来客直前。ここはことを荒立てずにどう着地させるか。俺は無い頭をフル回転させて考えあるアイディアに行きつきました。こ、これしかないッ！！

俺はまるでパーキングエリアで無防備にフランクフルトを食いに来たついでのようなナチュラルさでAに近づき「あっ、コーヒー飲めない人もいるかもしんないっすね、水にしときますか」と妥協案をさり気なく提示しました。そもそもコーヒーとか言う好きな人は限りなくこだわり続ける魔の嗜好品の話である限り、この呪縛は解けようがありません。その土俵をコーヒーから水に変えることで、AもBもどちらも傷つけずメンツを保ち、なおかつ客にも別に失礼ではない。そんな第三の選択肢を瞬時に思い付き、自然に提示できる自分のスキルの高さにほれぼれしました。

A『じゃあ水とコーヒー両方コンビニで買ってくればいいじゃん』

こいつゥ…どこまでコンビニコーヒー好きなんだァ…！！せっかく！俺が！いい案を！もってきたのに！台無しじゃねーか！殺すぞ！どんなこだわりなんだお前は！水も飲んで！コーヒーも飲んだら！おなかタプタプになんじゃねーか！！おい！それともあれか！コンビニコーヒーに親でも殺されたのかおい！！！！コンビニか！！それともコーヒーか！！どっちが殺したんだ！！そこらへんハッキリしろや！！！今気づいたけどこの例えなんか違うな！！でももう勢い的に止まんねーからいいわ！！

B『だから冷めちゃうからコーヒーサーバのほうがいいって』

まだ言ってんのかお前は！！！コーヒーサーバーはもういいだろ！！てか俺がせっかく水っていう選択肢を出しているのにコーヒーに土俵を戻すな！！殺すぞ！！そして『味』という軸のほかに新たに『温度』というファクターを付け足すんじゃねええ！！！！その要素いらねーわ！！お前さ、あれよ。もしドラクエにHPとMP以外に『おしゃれ度』とかあったらどう思う？いる？いらねーだろ？どう考えても不要だろその軸！6であったけど。それ以降一度もでてねーじゃろがい！！！そこらへんよく考えい！てか直で言え！！！Aに！！お前口あるぞ！知らなかったと思うけど！！口！あるよ！そこに！おい！！

と、来客直前にいろんなこと言いまくる両先輩に、俺はちょっと右往左往しておりましたが、心の中ではAとBをそれぞれ2億と7発ずつぶん殴り、サソリ固めで背骨をバキバキに追った後、ステップオーバートゥ-ホールドウィズフェイスロックをがっちり決めていました。そんでAもBも無視して客の数だけ水を買いました。

そしたらめっちゃ余った。

みんな喉乾いてなかった。

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお！！！！！！